反応工学・プロセスシステム

化学を社会に輝かせる!~現象解析と工学応用の化学工学~


外輪健一郎 先生

京都大学 工学部 理工化学科 化学プロセス工学コース/工学研究科 化学工学専攻

どんなことを研究していますか?

化学はプラスチックや半導体などの付加価値の高い物質を生み出して生活を便利にするだけでなく、環境問題やエネルギー問題といった課題の解決に大きく貢献できる学問です。化学の能力を十分に発揮させるため、反応や分離などの現象を解析して高い性能を示す装置やプロセスの開発を行っている学問分野があります。これを化学工学といいます。

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化学工学が活躍しているのは化学産業だけではありません。化学工学の手法を使うと化学に限らず様々な現象を解析して工学的に応用できるため、バイオ、医薬、食品、ナノテクノロジー、エネルギー産業をはじめとする広い分野で重要な役割を担っています。

私が専門とするのは化学工学の中でもプロセスシステム工学と呼ばれる分野です。この分野の重要な役割の1つは装置やプロセスを目的に合わせて最適化する技術の開発です。ここで用いられる最適化の技術は応用範囲が広く、装置での性能最大化、化学工場での消費エネルギーや環境負荷の最小化はもちろん、社会における炭素循環システムの研究にも応用が可能です。

1ミリ以下の微小空間で化学反応を進行させるマイクロリアクタが、物質生産を変える!

新しい化学プロセス技術として、微小空間で化学反応を行うマイクロリアクタが注目されています。マイクロリアクタとは、1ミリサイズの流路の中で反応を行う技術で、従来の装置に比べて反応条件を格段に制御しやすいことがわかっています。昔ながらのフラスコでは合成が難しい物質がマイクロリアクタでは容易に合成できることを証明した論文が数多く報告されています。

私の研究テーマの1つは次世代の化学技術ともいえるこのマイクロリアクタの解析とその応用技術の開発です。化学工学の手法で現象の解析を進め、さらにプロセスシステム工学の見地から、マイクロリアクタを使った物質生産の最適な姿を明らかにするための研究を行っています。

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→製造業
  • ●主な職種は→化学プロセス技術開発、化学製品製造
  • ●業務の特徴は→環境やエネルギーのことを考えながら新しい化学プロセス技術の開発、設計、運転をしています。
分野はどう活かされる?

化学メーカー、医薬品メーカーなどで、製造プロセスの開発研究や設計などに携わっています。このような仕事は、反応工学やプロセスシステム工学といった化学工学の知識を習得している技術者が主役です。

先生から、ひとこと

化学工学という学問は高校生にはなじみが薄いと思いますが、産業では極めて重要です。化学をはじめエネルギーや環境など応用範囲が広く非常に面白い分野ですので、ぜひとも興味を持ってほしいと思います。

マイクロリアクタが登場したように化学のカタチはどんどん変わると思います。例えばこれからは、化学の分野で人工知能などの情報技術が一層活用されることは間違いないでしょう。そのような時代には、化学工学やプロセスシステム工学が活躍する場面が一層増えると思います。

先生の学部・学科はどんなとこ

京都大学工学部理工化学科は化学工学の教育研究の拠点となっていて、化学工学を専門とする教員が多く集まっています。基礎から応用まで、化学工学の知識や技術を広く学習することができます。

先生の研究に挑戦しよう

マイクロリアクタは微細な管路内を流通させながら反応させるので、長い時間がかかる反応に用いると流路が長くなりすぎるため不適です。では反応時間が中途半端に長い反応があったとき、マイクロリアクタを使うべきかどうか判断するには、どのような因子を考慮に入れる必要があるでしょうか。また総合的にどのような方針で判断を下すのがよいでしょうか?

本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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