生体医工学・生体材料学

がん診断

早期のがん診断・がん治療を支えるナノマイクロ技術


中島雄太先生

熊本大学 工学部 機械数理工学科(自然科学教育部 機械数理工学専攻)

出会いの一冊

好きになる免疫学

萩原清文(講談社)

免疫の仕組みや病気の仕組み、免疫の役割や働きなどが絵を用いながらわかりやすく書かれていて、とても理解しやすい本です。私自身は工学系で生物や細胞、バイオについては疎いのですが、免疫については興味を持っていました。この本のおかげで免疫学の入口を学ぶことができ、現在の研究を進めるきっかけにもなりました。

こんな研究で世界を変えよう!

早期のがん診断・がん治療を支えるナノマイクロ技術

免疫細胞を医療の部品に

私は、免疫細胞が持つ機能を医療に使うことを目指し、「ナノマイクロデバイスや生体材料」などの工学技術を基にして免疫細胞をセンサや薬、治療器具などの“部品(モジュール)”として扱おうとしています。

特に現在は、がん診断とがん治療に焦点を当てて研究を進めています。

血液や尿、唾液を使ってがんを見つける

日本人の死因の第一位はがん(悪性新生物)であり、がんによる死亡率は1940年代から現在まで右肩上がりに増加しています。

一方、がんは早期に発見し早期に治療すれば治る病気と言われています。がんの早期発見には、自覚症状が出る前からのがん検診が必要ですが、現状では検診受診率は50%程度の低い数値に留まっています。

また、CTやMRI、PETなど確立されたがん診断法がありますが、微小ながんを発見することが困難な点などの課題が残っています。

このような課題を解決するために、血液や尿、唾液を使ってがんを診断するリキッドバイオプシー(液体生検)が研究・開発されており、低侵襲かつ迅速にがんの有無やがん発症リスクを検査する方法が実現されつつありますが、まだまだ確立には至っていません。

がん組織を内部からも治療

現在、私の研究室では、リキッドバイオプシーで早期にがんの部位を診断できるモジュールや、生体材料の援用によりがん組織を内部から治療できるモジュールの開発に取組んでいます。

これらのモジュールを使うことにより、2種類のがん種を見分けることに成功しました。また、がん組織内部から自発的にがん細胞を損傷させることに成功しました。

研究開発をさらに進め、これらを実現できれば、がんの早期発見・早期治療を達成でき、がんを“治る病気”にすることができます。

手のひらサイズのがん検査デバイス
手のひらサイズのがん検査デバイス
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

私自身がこの研究の専門分野に出会ったのは大学生になった後でした。もともと、ものづくりが好きで、航空機や自動車などの大きな機械類の設計や開発に携わりたいと考えて、機械工学の分野に進んだのですが、ナノ・マイクロ技術と出会ってからは、今までに実現されていない“小さなモノ”を創り出し、工学的な視点から医療やバイオの分野に貢献したいと考えるようになりました。

現在は、簡便かつ早期のがん診断・がん治療や再生医療を実現するべく、医学者や薬学者、生物学者、化学者、企業など異分野融合・産学連携により研究を推進しています。

組織形成デバイス
組織形成デバイス
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「包括的がん医療実現にむけた免疫細胞モジュールの創成」

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先生の分野を学ぶには
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学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 自動車・機器

(2) 医療機器

(3) 電気機械・機器(重電系は除く)

◆主な職種

(1) 設計・開発

(2) 基礎・応用研究、先行開発

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

熊本大学には、医学部や薬学部、国際先端医学研究機構、発生医学研究所などライフサイエンス系の組織が複数あり、アクティブな研究者がたくさん在籍しています。私は工学部に所属していますが、上記のライフサイエンス系の先生方と多くの共同研究を行っています。学内でも医工連携研究や異分野融合研究が推奨されており、分野を超えた連携研究を行いやすい環境が整っています。

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

リキッドバイオプシー 体液中腫瘍マーカーの検出・解析技術

落合孝広:監修(シーエムシー)

がんの医療には、早期に発見することと早期に治療することがとても重要です。この本では、がんを早期に発見するための技術として、血液や唾液などの生体液を使って簡単で苦痛を伴わず、早期に病気の診断を行うことができる技術について解説されています。

この本は2017年に発行された本ですが、ここで解説された技術やデバイス、機器などに関しては、現在も多くの研究者によって研究・開発が進められています。これらの技術開発は今後のがん医療に大きな革新をもたらすものと考えられます。


はたらく細胞

清水茜(講談社)

体内の細胞を擬人化した物語です。ヒトの中で働く細胞についておもしろくかつ正確に書かれており、楽しみながら細胞について学ぶことができます。

一問一答