生物機能・バイオプロセス

磁性ナノ粒子

磁性ナノ粒子が創る新しい医療-再生医療とがん治療法の開発-


井藤彰先生

名古屋大学 工学部 マテリアル工学科(工学研究科 化学システム工学専攻)

先生のフィールドはこの作品から

ヱヴァンゲリヲン新劇場版

庵野秀明(総監督)

私たちは現在、筋肉のもととなる細胞を磁力で重ね、「動く」筋肉組織を作る研究を行っています。このような「人工筋肉」の研究テーマの究極の到達点は、「バイオロボティックス」です。エヴァンゲリオンは、マジンガーZから始まる「巨大ロボット」シリーズにおける「バイオロボット」であり、生き物であるので傷口を自己修復・自己再生する柔らかいロボットです。作中には「セントラルドグマ」や「シナプス」といったバイオロジーの専門用語も出てきます。

世界を変える研究はこれ!

磁力で細胞を操って移植用組織を作る 磁力で発熱してがんを殺す

磁力で細胞を操る

“magnetic”には、「磁性の」の他に、「魅力的な」という意味があります。私は無毒な酸化鉄のナノ粒子(直径1億分の1メートル)を加工することで、磁性ナノ粒子を作製し、それを用いた医療技術を開発しています。

磁性ナノ粒子を再生医療用の細胞にくっつけることができたら、磁力で細胞を操ることができます。ばらばらに培養された細胞を磁力で積み上げて立体的な移植用の組織を作ることに成功しました。

磁性ナノ粒子の発熱性に着目

また、磁性ナノ粒子は交流磁場で発熱する性質があります。がん組織にだけ磁性ナノ粒子があれば、磁場照射によってがん細胞だけを加温することができますので、がん細胞にだけくっつく磁性ナノ粒子を開発しました。磁性ナノ粒子を血中に注射すると体中を巡回し、がん細胞と出会うとくっつき、その後に体の外から磁場を照射することで、磁性ナノ粒子が発熱して、がん細胞だけを加温して殺すことに成功しました。

バイオテクノロジーに興味、工学部へ

これらは医学部ではなく薬学部でもなく、工学部発の医療技術です。私は高校生の時に医療系のバイオテクノロジーに興味を持ち、当時名古屋大学に新設されていたバイオテクノロジーの学科に入学しました。磁性ナノ粒子の医療応用を専門とする先生に師事することができ、それ以来、磁性ナノ粒子という魅力的な素材に心を惹きつけられています。

今は色々とやりたいことが探せる高度情報化社会です。ぜひ興味をもったことに関する情報を自分から探してみてください。

スイスのダボスにて、国際学会で講演

先生のフィールド[熱制御] 平成29年度採択課題ではこんな研究テーマも動いている!
SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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健康と福祉のために、再生医療とがん治療法について研究しています。再生医療の中でも、人工筋肉と人工膵臓の構築、臓器の凍結保存の研究を行っています。現在の高齢化社会の中で、筋肉の研究は加齢による筋肉の減少に活用できますし、試験管の中で膵臓を作りだすことができれば糖尿病の治療に役立ちます。また、脳死患者の臓器を長期保存する技術は、現在まだありません。臓器を凍結保存できるようになれば、臓器移植に革新をもたらすと信じて日々研究しています。

先生の分野を学ぶには
注目の研究者や研究の大学へ行こう!

井藤彰先生 の研究・研究室を見てみよう
研究室の実験風景。学生が細胞培養を後輩に教えている
先生の学部・学科で学ぼう

マテリアル工学科は、材料工学と化学工学が融合してできた新しい学科です。名古屋大学工学部マテリアル工学科では、材料の科学や工学から、化学工学における生産プロセスの設計まで、幅広い視野と専門知識を持った人材を育成します。

中高生におススメ

ひらく、ひらく「バイオの世界」 14歳からの生物工学入門

日本生物工学会編(化学同人)

酒や発酵食品といった身近なバイオテクノロジーから、遺伝子組み換え、クローン動物、万能細胞などバイオテクノロジー技術をやさしく解説。「14歳から」とありますが、高校生も十分楽しめます。


先生に一問一答
Q1.感動した映画は?印象に残っている映画は?

『Life is Beautiful』『64(ロクヨン)』『ダンサー・イン・ザ・ダーク』

Q2.熱中したゲームは?

ドラゴンクエストは、Iからシリーズをだいぶやりましたが、最近は諦めました。

Q3.研究以外で楽しいことは?

週末にフットサルをやっています。サッカーはクリエイティブだと思います。


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