江戸~明治期の漁民たちの豊かな知恵や暮らしに学ぶ
古文書を読み、今に生きる人からも話を聞く
行っている研究は、日本の近世・近代移行期(江戸から明治時代への転換点)という過去(ときには現在)の海辺に生きた人々の生き方に学ぶという、素朴なことです。
私の専門は歴史学、なかでも文献史学といって(今回の研究の分類は文化人類学・民俗学となっていますが)、いわゆる古文書に記された過去の人々の姿を読み解く営みです。時には現在に生きる人々からの聞き取り調査が、過去を観る上での参考になることもあります。古文書の記述や人々の生の声に耳を傾け、学び、論文などで自分なりの表現にまとめて世に伝えるのが私の仕事です。
村は、人間集団の根源的な形
人間が集団で生きるとはどういうことなのか。それが、研究者として、それ以前に一人の人間として私が抱いている、根本的な問いだと思います。その問いを追究するために、海辺の村に生きた人々の歴史を研究しているのかもしれません。
村というのは、人間が集団で生きる上での根源的な形の一つだと思いますし、何のご縁か、いつしか村の中でも特に漁村の研究を専らとするようになりました。
海辺の自然環境は、どんな知恵や文化を生み出すのか
今回の研究では、当時の漁民たちが、地域の自然・社会環境に即して生きる中で経験的に身につけた知(認識・思考)や、それらと漁村秩序の特質との関連性について考えを深めたいと思っています。
そこには、現代の高度に文明化された社会とはまた別の、豊かな知恵や生き方があり、今の私たちが学ぶべきことも少なくないと思います。
「日本近世・近代移行期における漁民の経験知と漁村秩序の動態に関する研究」
「文化人類学・民俗学」が 学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)
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「20.文化・文学・歴史・哲学」の「81.地域研究、文化人類学・民俗学」
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「20.文化・文学・歴史・哲学」の「83.史学、考古学」
語る歴史、聞く歴史 オーラル・ヒストリーの現場から
大門正克(岩波新書)
歴史研究は、文字の形で遺された資料だけでなされるのではありません。例えば、オーラル・ヒストリーといって、人々の語りが素材となり、聞き取り調査が手法とされることもあります。本書では、大門正克さんという一人の歴史研究者によって、オーラル・ヒストリーとはいかなるものなのかが語られています。
私の専門は文献史学で、文字資料を読み解くことを主としていますが、数年前から、聞き取り調査も取り入れるようになりました。古文書の読み解きと聞き取り、どちらも面白いと感じ、大切にしています。本書を通して、歴史研究における聞き取り調査の魅力や可能性を垣間見てもらえれば幸いです。