観光学

地方のブランド力

地域を元気にするブランド力を考える


徳山美津恵先生

関西大学 総合情報学部(総合情報学研究科 社会情報学専攻)

出会いの一冊

場所のブランド論:プレイス・ブランディングのプロセスと実践手法

若林宏保、徳山美津恵、長尾雅信、宮崎暢、佐藤真木(中央経済)

「場所をブランド化する」とかどういうことか、事例を踏まえてわかりやすく説明した本になります。東京在住の会社員でも、シェフでも、新米ママでも誰でも地域を変えることはできるんだ、ということをわかってもらうために、ブランディングのプロセスをわかりやすいモデルにしただけでなく、身近な人を想定したショートストーリーを入れたりと、実践のハードルを低くするための工夫をしています。

日本では都市への一極集中が進み、都市でも地方でも多くの問題が山積しています。でも、自分たちが動けば、その場所を面白くすることができる。そうした希望を持って地方に移住する人たちもたくさん出ています。そういう人たちの応援ができるような研究をしていきたいと思っています。

こんな研究で世界を変えよう!

地域を元気にするブランド力を考える

近い将来、地方都市の半分が消滅?

私は地域を対象に研究を続けています。特に大都市ではなく、地方や田舎と言われる地域に焦点を当て、こうした地域を元気にするにはどうしたら良いかという問題意識を持って、研究を続けています。

2014年に増田レポートというものが出されましたが、近い将来、日本の過半数にあたる地方都市が消滅するという衝撃的なものでした。実際に、地方都市の多くで、人口減少が進んでいます。

ポートランド型ライフスタイルがブランド力

ただ、そこには希望もあります。例えば、アメリカのオレゴン州ポートランドは西海岸にあるのですが、近年、多くの若者がロサンゼルスやシアトルといった大都市でのきらびやかな生活を捨て、この町に移住してきます。

なぜなら、自分のやりたい仕事をするために起業して、友達や家族と食事を共にし、週末には郊外の海や山でアウトドアライフを楽しむ、という人間らしい生活がそこにはあるからです。

大企業があるとか、大きなショッピングセンターがあるということではなく、人々の憧れるポートランド型ライフスタイルが、この都市のブランド力になっているのです。

地方が日本を面白くする

翻って、日本。研究を進めていく中で、地方に移住して生き生きと働いている人たちや自分たちの町をとことん愛する人たちに出会い、日本もまだまだ捨てたものではないと感じています。

これからの地方のあり方が、日本を面白くするのではないかと信じ、地方のブランド力を上げるためのブランディングを考えていこうと思っています。

2023年9月に奄美大島で行われたワークショップの様子です。奄美イノベーション代表の山下さんの講演をゼミ生が聞いているところです。
2023年9月に奄美大島で行われたワークショップの様子です。奄美イノベーション代表の山下さんの講演をゼミ生が聞いているところです。
先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「プレイス・ブランディングにおけるセンス・オブ・プレイス手法の体系化」

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中高生におすすめ

里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く

藻谷浩介、NHK広島取材班(角川oneテーマ21)

藻谷さんは国内外を精力的に歩き回ることで有名な方です。だからこそ、世の中で流布されている言葉に惑わされず、自分の目で地方を見て、その価値を判断しています。地方には、都会とはまったく違った豊かな暮らしがあることを、この本は教えてくれます。


美しき日本の残像

アレックス・カー(朝日文庫)

アレックス・カーは、1970年代に、平家の落武者伝説も残る徳島県の祖谷という地方に日本に残る美しさを見つけ出した人です。ここは現在、日本の秘境として国内外から観光客を集める場所となりました。日本という国の美しさとは何か、アレックスの視点には日本人として気づかなかった点が多くあります。


りんごかもしれない

ヨシタケケンスケ(ブロンズ新社)

絵本です。でも、すごく深い絵本で、娘たちに読み聞かせながら、りんごに哲学を感じました。ヨシタケさんの絵本からは、デザイン思考やマーケティングなど様々なスキルが感じられます。いつも一番すごいと思っているのは、子どもたちへの共感力ですが。


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