第一次産業の中で最も存在感が薄いのが「林業」です。しかし、林業が営まれる「森林」に視点を広げてみれば、身近な話題に事欠きません。地震や豪雨で木々がなぎ倒されている被災地の様子をニュースで目にされた方も多いでしょう。自然災害が相次ぐ中で、国土面積の7割を占める森林の適切な管理はますます重要度を増しています。また、近年では温室効果ガスである二酸化炭素を吸収・固定して長期間にわたり貯め込む機能にも注目が集まっているところです。
持続可能な森林管理を誰がどのように進めていくのか――。それは、木材と特用林産物(きのこ、山菜、薪など)を生み出す「資源」の問題であると同時に、急峻な山岳地帯を有する国土を保全する国家的な「防災」、そして気候変動対策という国際的な「環境」の問題でもあるのです。
森林は私たちの暮らしに欠くことのできない財やサービスを生み出します。しかし、こうした役割を担う国内の林業はといえば、木材価格の低迷と担い手の不足により厳しい経営状態が続いており、その先行きは不透明です。林業経済学を専攻する私は、国内外の現場に足を運ぶフィールドワークを通して、森林の再生、林業の再建、山村の再興の道筋とその具体的な方策について検討を重ねています。
森林利用の多様化で地域の未来を切り開く
国内の森林面積のうち約4割が、効率的な木材生産を目的に植え替えられたスギやヒノキなどの人工林で占められています。こうした中で、近年、森林の持つ保健・レクリエーション機能に着目した森林セラピーや森のようちえんなど、従来の林業(=木材生産)とは異なる形での森林利用が国内各地で見られるようになってきました(鳥取県智頭町など)。
そこでは、さまざまな財・サービスを生み出す場として森林が捉え直され、新しい生業(なりわい)が生まれてきています。いずれも自然(森林)と人間の新しい結び付きの在り方を示す先駆的な取り組みであり、持続可能な国土づくりに向けた重要なヒントが含まれています。
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「18.社会・法・国際・経済」の「75.経済学、農業経済・開発経済」
一般的な傾向は?
●主な業種は→農業関係から小売り・サービス業に至る幅広い業種
●主な職種は→都道府県職員、市町村職員、協同組合職員(農協、生協)
分野はどう活かされる?
国内各地の農山漁村でのフィールドワークの経験を活かして、地方自治体(北海道、市町村)の職員として地域づくりの最前線で活躍しています。例えば、出身地に戻った卒業生は、市の職員として地域の課題に向き合い、住民が抱えるさまざまな課題を解決するため日々奮闘しているようです。
全国の経済学部の中でも本学の地域経済学科は異色の存在です。本学科には、農林漁業の経済学、経済地理学、中小企業論、協同組合学、地方財政論、地域社会学など「地域経済」に関わりの深い専門家が揃っています。また、本学部の看板科目の一つである「地域研修」は、国内各地の地域づくりの現場に直接足を運ぶフィールドワークを重視しており、教室の外での現実の「生きた」経済を学べる科目として人気です。
その受講に当たっては、文献資料の収集・分析を通して問題意識の共有を図る事前学習、研修の成果をレポートにまとめる作業、報告会でのプレゼンテーションの実施が求められるなど、実践的で複合的な学習内容となっています。「地域研修」をきっかけに自治体職員を目指す受講者も少なくありません。
経済学の学びの場は教室だけではありません。教室の外にもぜひ目を向けてください。大切なのは頭と身体を動かして考え抜くことです。教室で学んだ「理論」と「現場」での体験が紡ぎ出す学びは、選んだ道を歩み続ける糧となります。
家族や親戚、知人の紹介を得て、農山漁村で実際に暮らす人々から直接話を聞き、そこでの日々の暮らしの現実に触れることから始めてはいかがでしょうか(きっと誰かにたどり着けると思います)。みずみずしい感性を持った高校生だからこそ、農山漁村の新たな魅力に気付くことができると思います。既成の枠にとらわれない発想が生み出す地域再生のアイデアは、大都市圏に人口が集中する現代日本の国土構造を変える原動力になります。