環境負荷低減技術・保全修復技術

農業を根本から変える!植物病原菌に薬を直接、デリバリーする画期的技術


野村俊之 先生

大阪公立大学 工学部 化学工学科/工学研究科 物質化学生命系専攻

どんなことを研究していますか?

病原菌などの植物の病害による食糧被害は、世界の農業生産の10~20%を占めており、その損失は8億人の食糧に相当すると言われています。食糧の安定供給は、人類にとっての最重要課題の1つです。これを克服するために、近代農業では、病害の予防や対策、除草の簡素化などを目的に大量の農薬が使用されています。また土壌に大量の肥料も撒かれています。しかし、これらは植物への吸収効率が低いことから、大部分を土壌や生態環境中に散布しているようなものであり、人的負担も大きいです。環境、コストの軽減と農作物の生産性の向上が同時に達成される、画期的な負荷低減技術が望まれています。

ナノポリマー粒子に農薬を封入し、植物細胞内へ

私が考えた画期的な方法とは、非常に微小なナノ粒子を用いて、直接、植物細胞内に薬物を送り届けることで、植物病害の駆除や予防、回復を試みる検討です。ただし人為的に作られたナノ粒子が、生体に及ぼす影響については、未知な部分が残されたままです。それまで植物細胞が、能動的に人工的な異物を取り込むことは困難と考えられていたのです。そこで生体と相性の良いナノポリマー粒子を創り出し、この粒子に農薬を封入し直接送り込むことを挑みました。実験結果、植物病原菌の感染阻害率が向上することを明らかにしました。薬物送達だけでなく、病気を治す遺伝子送達についても検討しています。

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学生の研究の様子。共焦点レーザー顕微鏡で、細胞内への粒子送達を観察しています。

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→製造業:化学、繊維、食品、医薬品など
  • ●主な職種は→技術系
  • ●業務の特徴は→生産技術、技術開発、研究開発
分野はどう活かされる?

化学工学課程で学ぶ「化学工学」は、モノを生産するプロセス全体を、物質・エネルギー収支、コスト面から理解することができます。卒業生は、コストダウン、効率化、環境負荷の低減など、課題解決に必要な幅広い知識を備えているため、「モノづくり」に携わる企業には必要不可欠な人材として活躍しています。

本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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