地球・資源システム工学

後の世代に禍根を残さない 二酸化炭素の地中貯留


佐藤晃 先生

熊本大学 工学部 土木建築学科/自然科学教育部 土木建築学専攻

どんなことを研究していますか?

地球の内部には豊富な資源やエネルギーがあると同時に、深部空間としての利用価値があります。そこに着目した研究が「地球・資源システム工学」では行われています。その一つが二酸化炭素を地中貯留です。

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地球温暖化問題の解決には二酸化炭素の削減は欠かせません。二酸化炭素を地中に埋めてしまう「CO2地中貯留」が、新しい技術として注目されています。この方法は地中深くのキャップロックという岩石の層に、火力発電所などの大規模発生源から分離・回収した二酸化炭素を圧入して、閉じ込めてしまおうという試みです。この方法なら、世界全体で総排出量の約100年分に相当する2兆トンを貯留できると試算されています。そこで、私たちは、高い圧力でキャップロックの岩石中に吹き込まれた二酸化炭素が岩石内部でどのような挙動をとるのか、または効率的に二酸化炭素の貯留が実行できる方法が考えられるか、そのような現象や課題を明らかにするための研究を続けています。(図1参照)

高レベル放射性廃棄物の地層処分

また、原子力発電で生じる高レベル放射性廃棄物の処分方法が問題になっています。そのため現在、地下300mより深い安定した地層中に廃棄物を処分しようという計画が検討されています。この計画では地下深い岩盤中に廃棄物の処分場が建設される予定です。私たちは、現在は岩石中での汚染過程について明らかにするために、岩石内部で物質が拡散したり溶出したりする過程を、X線CTスキャナーを用いて分析する研究を進めています。

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図1:岩石内部を浸透していくCO2(図中の縦縞模様の部分)を捉えた X線CT画像

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→大手建設業(ゼネコン)、大手建設関連のコンサルタント、資源開発会社(石油や石灰石)、電力会社
  • ●主な職種は→技術者(設計、施工、維持・管理)
  • ●業務の特徴は→専門的な知識を活かした技術職
分野はどう活かされる?

技術者として最前線で、設計、施工、維持・管理を担当し、数年後には多くの卒業生が責任者として現場を取り仕切るようになっています。これらの業種に必要な基礎知識、おもに数学や物理学をバックグラウンドとして、専門の応用科目の知識を活かしています。また、卒業・修了研究で培った研究遂行能力が、現場での業務遂行能力として大いに活かされています。

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熊本大学工学部で運用しているX線CTスキャナー

先生の研究に挑戦しよう

エネルギー、資源、環境などの分野に関して、今世の中でどのようなことが話題になっているのか、何が問題なのか、その問題意識を持っていただければありがたいです。例えば、ガソリンや灯油の値段の変動には、政治的、経済的な影響だけでなく、技術的な影響も様々に含まれています。これらがお互いにどのように関わっているのかを知るだけでも、今後、技術開発が必要な領域・分野を理解する重要なヒントになります。

興味がわいたら~先生おすすめ本

中学・高校物理のほんとうの使い道

京極一樹

中学、高校時代に、三角関数や微分・積分などは何のために学ぶのだろう、と思ったことはないだろうか。数学に限らず物理においても、課題には背景があることがわかると、より面白く学ぶことができる。この本では、教科書よりもリアルに、より身近に物理学の使い道を知ることができる。 (じっぴコンパクト新書)


マインクラフト

3Dブロックを使って自由に探索、採掘を進め、思い思いの世界を作り出すことのできるゲーム。鉱物資源の名前や使い道を、ゲームを通して知ることができる。中にはかなりレアな鉱物も登場するため、鉱物に興味を持つきっかけとなるだろう。 (Markus Persson)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。